腸内環境の改善によるストレス対策が慢性炎症を抑える
当ブログでは、慢性炎症・酸化ストレス・糖化を防ぐためのアンチエイジング・デトックス・ダイエット方法について書いていますが、今回は腸内環境の改善によるストレス対策が慢性炎症を抑えるということについて述べていきたいと思います。
乳酸菌や食物繊維などによる腸内環境の改善が、ストレス対策に効果を発揮する理由は、腸内に乳酸菌などの善玉菌が増えると、その分、ストレスに対する抵抗力やストレスへの耐性が増すと考えられるからです。
以前の記事で、必要以上のストレスを感じることは、酸化ストレスによる慢性炎症につながるということについて述べましたが、そのような過剰なストレスの対策や緩和に、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌を増やすこと、すなわち腸内細菌のバランスを整えることは有効だと考えられるのです。
このストレスと腸内細菌の関係については、2004年、科学雑誌「Journal of Physiology」に掲載された九州大学の須藤信行教授の研究が有名ですが、マウス実験においては、腸内細菌の存在がストレスの影響を左右していることが分かったのです。
このことはどういうことかといえば、腸内にどのような腸内細菌が生息しているかによって、体内のストレスに対する反応は変わってくるということです。
慢性炎症を抑えるためには腸内細菌のバランスを整えることが必要不可欠
また医学博士の藤田紘一郎氏は、『人の命は腸が9割』のなかで、
「ストレスへの耐性を自ら高めることが、病気を防ぐ最大の方法」
であるとし、
「ストレスから心身を守るには、善玉菌が優勢で、多種多様な菌が共存する腸内環境を保つ工夫をすることです。それが心身のストレスへの耐性を自ら高める最大の方法です」
と述べています。
腸にはたくさんの神経細胞が集中していますから、脳が感じたストレスの情報が、脊髄や自律神経を通じてすぐさま伝わります。そのため、腸は非常にストレスに敏感です。
また、食道から胃、腸にいたるまでつながっている消化管は、脳とは独立した独自の神経系があるため、脳からの情報をただちに受け取るだけでなく、脳に対してさまざまな情報発信を行っています。
腸は、情報伝達の受け手というよりは送り手であることのほうがはるかに多いのです。体の中では脳が司令塔としてもっとも重要な役割を果たしていると考えている人が多いでしょうが、真の司令塔は腸にあるというわけです。(藤田紘一郎『腸を鍛えればストレスは消える!』p24~25)
さらに、ロブ・デサール , スーザン・L. パーキンズ氏らによる『マイクロバイオームの世界』でも、
微生物コミュニティの構造の変化は腸にいくつかの影響を及ぼす可能性があるが、なにより重大なのは、炎症にかかわる影響かもしれない。消化管では、腸壁の透過性を上げ、結果的に腸の微生物相の数と種類を調整するうえで決定的な意味をもっている。ストレスは腸膜の透過性を上げ、結果的に腸の微生物相に影響を及ぼす。(ロブ・デサール , スーザン・L. パーキンズ『マイクロバイオームの世界』斉藤隆央 訳 p255)
といったように、ストレスと腸と炎症の関係について述べられています。
したがって、慢性炎症を抑えるためには、腸内細菌のバランスを整えることで、腸内環境を改善することが必要不可欠になってくると考えられます。
特に近頃は、ストレスなどが原因で腸管からバクテリアやウイルス、化学物質などが体内から流れ出してしまう「リーキーガット症候群」も、炎症の原因になるとして問題視されています。
そのため、ストレスによる体内の炎症を抑えるためには、腸内環境に目を向けることが非常に重要なのです。
ストレスによる体内の炎症を抑えるためには、腸内環境が重要。
「プロバイオティクス」による腸内環境が改善でストレス対策
では具体的にどのようにして腸内に乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌を増やしていけば良いのでしょうか?
そのためにはまず、「プロバイオティクス」が効果的だと考えられます。
「プロバイオティクス」とは生きたまま腸にたどりつき、そこで産生する乳酸などの代謝産物が、ヒトのカラダに有益な健康効果をもたらしてくれる微生物のことです。
つまり、乳酸菌やビフィズス菌などの体に良い影響をもたらす菌が含まれた食品(「プロバイオティクス」)を直接腸内環境に送り込んであげるのです。
実際、この「プロバイオティクス」によって、抗ストレスホルモンである「コルチゾール」の値が減少したという研究報告があります。
ヒトの気分に対するプロバイオティクスの効果を調べた治療として優れたものは、これまで数件しか発表されていない。そのうちの一件では、女性の被験者にプロバイオティクスを四週間投与した後、怒った顔と親しげな顔の写真を見せて、そのときの脳の活動を計測した。その結果、気分に大きな変化は見られなかったが、情動反応が抑制されることがわかった。(ティム・スペクター『ダイエットの科学 「これを食べれば健康になる」のウソを暴く』 熊谷玲美訳 白揚社 p94)
女性と男性の両方を対象とした別の同じような治験では、血中のコルチゾール値が減少していた(コルチゾールはストレスがあると増える)。この効果は、プロバイオティクスを摂取してから一カ月後にも見られた。また、ヨーグルト会社がスポンサーになった研究では、牛乳そのものではなく、ヨーグルトに含まれる微生物のほうに、脳の中枢部分を活性化させ、やはり否定的な考えを抑える可能性があることが確かめられた。(同)
このように「プロバイオティクス」によって乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌が腸内に増えれば、ストレスへの耐性が増すことは十分考えられます。
また、腸内細菌のバランスを整えるためには、「プロバイオティクス」だけに頼るのではなく、食物繊維やオリゴ糖など、善玉菌のエサになる栄養成分が含まれた食品である「プレバイオティクス」を、一緒に摂るようにする工夫も大切です。
参考記事